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第11話  

Penulis: リンフェイ
「行こう」

結城理仁は心の中で内海唯花に小言を呟いたが、直接彼女に何か言ったりしたりはしなかった。

内海唯花は彼の妻だが、名義上だけだ。お互いに見知らぬ人と変わらなかった。

運転手は何も言えず、また車を出した。

一方、内海唯花は夫の高級車にぶつかりそうになったことを全く知らず、電動バイクに乗ってまっすぐ店に戻った。牧野明凛の家は近くにあるので、彼女はいつも内海唯花より先に店に着いていた。

「唯花」

牧野明凛は店の準備が終わってから、買ってきた朝食を食べていた。親友が来たのを見て、微笑んで尋ねた。「朝もう食べたの」

「食べたよ」

牧野明凛は頷き、また自分の朝食を食べ始めた。

「そういえば、おいしいお菓子を持ってきたよ、食べてみてね」

牧野明凛は袋をレジの上に置き、親友に言った。

電動バイクの鍵もレジに置くと、内海唯花は椅子に腰をかけ、遠慮なくその袋を取りながら言った。「デザートなら何でも美味しいと思うよ。あのね、明凛、聞いて。ここに来る途中で、ロールスロイスを見かけたよ」

 牧野明凛はまた頷いた。「そう?東京でロールスロイスを見かけるのは別に大したことじゃないけど、珍しいね。乗っている人を見た?小説によくあるでしょ、イケメンの社長様、しかも未婚なんだ。そのような人じゃない?」

内海唯花はただ黙って彼女を見つめた。

にやにやと牧野明凛が笑った。「ただの好奇心だよ。小説の中には若くてハンサムなお金持ち社長ばかりなのに、どうして私たちは出会えないわけ?」

「小説ってそもそも皆の嗜好に合わせて作られたものでしょ。どこにでもいるフリーターの生活を書いたら誰が読むのよ、まったく。社長じゃなくても、せめてさまざまな分野のエリートの物語じゃないとね」

それを聞いた牧野明凛はまた笑いだした。

「そうだ。唯花、今晩あいてる?」

「私は毎日店から家まで行ったり来たりする生活をしてるだけだから暇だよ、何?」

内海唯花の生活はいたってシンプルだった。店のこと以外は、姉の子供の世話だけだった。

「今晩パーティーがあるんだ。つまり上流階級の宴会ってやつなんだけど、一応席を取ったから、一緒に見に行きましょ!」

内海唯花は本能的に拒絶した。「私のいる世界と全く違うから、あんまり行きたくない」

 確かに月収は悪くないのだが、上流階級の世界とは次元が違うので、全くそこに入りたくないし、そもそも入ること自体もできないのだ。

少し悪い言い方をすれば、彼女のような身分でそのような高級なパーティーに出ても、使用人としか思われないだろう。

「本当は私も行きたくなかったんだよ。でも、お母さんがおばさんに頼んで招待状をもらったの。一つの招待状で二人入れるの。それで、唯花のことを思い出したのよ。唯花、唯花様、お願いだから、ちょっと私に付き合って一緒に経験を積みましょ。いや、そうじゃなくて、私と一緒に適当に過ごしてくれればいいから。もうお母さんに耳が痛くなるほど言われたんだから、お願い!」

牧野家は以前からここに住まいを構えていた大金持ちだ。数軒の不動産と一本通りにある店舗の半分は人に貸して賃貸料をもらっていた。資産は少なくても数億だが、それでも名門貴族とは程遠いものだった。

牧野の母親は娘の整った顔立ちを自慢していて、娘を名門家庭のお嫁さんにしようとしていた。ちょうど牧野のおばさんは玉の輿に乗り、数十年の辛抱を重ねて、ようやく上流社会の一員になったのだ。

そのおばさんも牧野明凛のことを可愛がっていた。姪っ子なら玉の輿に乗ってもぎりぎり合格だと思ったので、牧野の母親がその話を切り出すと、喜んで引き受けて、絶対力になると約束した。

「またお母さんにいつ結婚するのかって催促されたの?」

「世の中の母親はみんな同じよ。娘を大人になるまで育てたら、すぐお嫁に出したがるの。毎日結婚結婚って急かされるなんて。私家にいても、別にお金に困ってるわけじゃないでしょ。自分で稼げるし、自立しているし、ちゃんと一人の生活を満喫しているんだよ。男なんて全然いらないじゃない?独身最高だよ」

「それに、玉の輿には絶対乗りたくないからね、嫁に行っても似たような家柄のところへ行ったほうがいいと思う。おばさんは今、確かに上流社会でうまくやっているけど、それには何十年もかかったんだよ。おじさんの所に嫁いだ時、どれほどの苦労を凌いだことか。昔実家に帰ってくると、裏でよくお母さんに泣きついてたの。その気持ち、おばさん自身が一番知っているはずよ」

牧野明凛は自由を愛し、名門のしきたりにちっとも縛られたくなかった。

「唯花、お願いだから、今晩だけ、一緒に行きましょう!視野を広めるためだと思ってもいい。おばさんが言ってたの。今夜のパーティ―には、東京でも指折りに数えられるほどのビジネスの大物ばかりなんだって。二代目や三代目の若い後継者たちも大勢集まってくるって。もちろん、婿釣りに行くんじゃなくて、ただ見るだけ。一番重要なのはご馳走がいっぱい出てくることよ」

内海唯花は食いしん坊だ。

牧野明凛も同じだ。

この二人が親友になれたのは、意気投合したからだった。

親友に一時間もしつこくねばられ、内海唯花は諦めて受け入れた。夜になると、早めに店を閉めて、親友に付き合ってパーティーに出席することにした。

姉に電話すると、甥っ子はもう医者に診てもらったようだった。ただの風邪で熱が出たので大したことじゃないと聞いて、ほっとした。

今夜、牧野明凛の付き添いでパーティーへ行くことも姉に伝えた。

「視野を広めるのはいいことだよ。もちろん、その階層の友達ができるのもいいことだわ」

佐々木唯月は妹がパーティーへ行くことに賛成だった。

不埒な目的を持たず、ただ自分と違う世界を見て、視野を広めるのだ。

夜のパーティーのために、昼ご飯を食べてからもう店を閉めた。牧野明凛は親友を連れて家へ帰った。身だしなみの準備と化粧をしなければならなかったのだ。

牧野家のみんなは内海唯花のことが気に入っており、彼女を連れてパーティーへ行くことについて誰も反対しなかった。どうせ内海唯花はもう結婚していたから、魅力が霞んでしまうこともないからだ。

夕方六時を過ぎたところ、牧野のおばさんの手配した高級車はもう牧野家の前に止まっていた。

「楽しんできてちょうだいね」

牧野の母親は二人を玄関まで送って、内海唯花に頼んだ。「唯花ちゃん、明凛のことを頼んだわよ。おばさんに代わってこの子をちゃんと見ててね。ただ食べてばかりいないでもっと若い人たちと交流させてやってちょうだい」

そして、また娘に向かって言った。「明凛、くれぐれもおばさんの苦心を無駄にしないでね、わかった?」

内海唯花は微笑んだ。「心配しないでください。明凛が食べてばかりいられないように、私がちゃんと見張りますから」

だって、二人一緒に食べるものだ。

「唯花ちゃんがいれば、おばさんも安心だわ」

 牧野の母親が内海唯花のことをとても気に入っているのは、しっかりしていて、ちゃんと自立できた娘だからだ。もし自分の息子が彼女より何歳も年下でなければ、息子の嫁として迎えたいと思っていた。

内海唯花がスピード結婚したことを知って、非常に悔しそうだった。牧野家には若者がたくさんいて、内海唯花が嫁に行きたいならその中から選べばよかったのに。

もうここまで来て、どう悔しがってもしょうがなかった。だからこの件については触れないことにした。

牧野の母親にせかされ、白いドレスを着て、綺麗な化粧をし、宝石のアクセサリーも付けた牧野明凛は慌てて親友の手を取って、一緒におばさんが手配した高級車に乗った。

 内海唯花はもう結婚していて、親友の付き添いでパーティーに参加するため、服も着替えず普段着を着ていたが、一応薄化粧をしていた。身なりは質素であっても、彼女の生まれつきの美しさは隠すことはできなかった。
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